その２１　今日はストライキ　鍼灸師・高木の日記

旅行　倫敦2010年11月

その２１　今日はストライキ

　頑固爺さん、まだブツブツと何か文句を言っている。

　絡まれると厄介だろうと思い、PCをシャットダウンしようとしていると、爺さんは私に話しかけてきた。

爺さん「あんた、何で立ってるんだ？　座ればいいじゃないか。」

いつのまにか、私の後ろの椅子とテーブルは空いていた。
わざわざ移動するのも面倒だったので・・

高木「仕事中ですから、私はここでいいです。」

爺さん「あんたは、いつも立って仕事するのか？」

いやいや、そういう意味じゃないって・・
ちょうど、別のお客さんが、私の後ろの椅子に座った。

高木「Sometimes.（時々）。」

　爺さんは、プルプル震える手でスキムミルクのスティックを握り締め、歯で引き裂き、1本、2本、3本・・と紅茶の入った紙カップに投入してゆく。

　パソコンを鞄に入れていると、爺さんは会話を続ける。

爺さん「今日はいくつかの地下鉄がストライキなんだよ、観光客らはそれを知っておらん！」

アンタに迷惑はかからんだろうに・・
まあ、言い方は荒いが、悪人には見えない。この人、不器用なんだろう多分。

今度はシュガースティックだ、何本分も爺さんはカップに投入・・・。

高木「私も観光客ですし、知りませんでした。貴重な情報ありがとうございます。」

頑固爺さん、初めてチラっと私の目を見る。険しい表情を、わずかだが緩めたようだ。

地下鉄のストライキは、そう珍しくないと観光ガイドブックには書いてあったことを思い出した。

私が帰る準備を終える頃、爺さんは何かの歌を口ずさみ始めた。
小声でなく、普通の大きさの音量で歌っている。

さ、帰ろう。

爺さんに軽く会釈して退散。
とても疲れる朝のコーヒータイムであった。

ホテルの部屋に戻り、テレビをON。
BBCチャンネルで、ストライキのことを報道していた。